離婚相談ブログ

realsound映画部に『ジュリアン』評が掲載されました

2019.02.25更新

realsound映画部に『ジュリアン』評を掲載していただきました。

 

補足というわけではないですが、この評を書いた動機について。

 

この映画については、共同親権反対の立場に引き寄せた紹介が目立ちます。

独立した芸術として作られた映画を、単なるプロパガンダに貶めるような紹介の仕方も複数見ました。

そこで、誰かが作品としての重層性と、メッセージの複雑性を指摘する必要があるのではないかと考えました。

 

私自身は、共同親権は理念としては向かうべき方向だが、それ以前に解決すべき点が多々ある、という立場です。

具体的には、すべての離婚における親権決定に裁判所が関与する制度の整備が先決では、と考えています。

単純な共同親権推進の立場から、逆方向のプロパガンダとして書いたわけでないことを、念のため補足させていただきました。

 

弁護士 小杉 俊介

面会交流はなぜ「月1回」なのか

2019.02.24更新

調停や訴訟で離婚する場合、面会交流の頻度は一般に「月1回」です。

当事者が合意できればもっと頻度を上げることは可能です。

でも、一方があまり積極的ではない場合、裁判所が示す一般的な回数は「月1回」になります。

 

「月1回」には、別に法的な根拠はありません。

子の発育等を考えた科学的根拠があるとも聞いたことがありません。

単なる慣習です。

 

裁判所まで持ち込まれるような離婚は一般に揉めている。

揉めている離婚では、月1回の面会交流が精一杯だ。

そういう意見もあります。

 

でも、離婚に至る原因は何も子に関することだけではありません。

どちらかの不貞などが原因で揉めているが、親子関係には別に問題ない。

そういった件だってたくさんある訳です。

現在は父親とは別居しているが、同居している際には、むしろ、父親の方が子育てを中心的に担っていた。

そういった件だって珍しくないわけです。

 

そういった場合にまで、親と子が触れる機会が月1回で足りる訳がありません。

それ以上の密接な関わりを保つことをきちんと定めた上で離婚したいと思っても、裁判所が協力してくれない。

せいぜい「月1回」までが一般的だと言われる。

しかも、その「月1回」の根拠はどこにもない。

 

これはやはり問題だと思います。

裁判所の作成する調停条項案は、こと面会交流に関して、もっと柔軟な方向に変わるべきです。

 

そもそも「面会交流」で足りるというのが、親の子に対する関わりを軽視しているのでは、という話はまた別の機会に。

 

 

弁護士 小杉 俊介

「選択的」共同親権で本当に良いのか

2019.02.18更新

法務省が選択的共同親権の導入を検討というニュースがありました。

リンク先では途中までしか読めませんが、紙面等で全文を読んだ方も多いと思います。

 

この問題に対する私の意見は、まず理念としての共同親権には賛同します。

向かうべき方向性だと思っています。

しかし、導入にあたっては、必ず先に解決されるべき問題があると考えています。

それは、共同親権導入反対派の同業者が強調するような「DV」ではありません。

DVが問題でないという意味ではありません。

DV問題と、親権を誰が持つかは、切り離しは可能です。

DV問題はDV問題として、親権問題は親権問題として、それぞれ別個に取り組むべき課題です。

 

それよりも、必ず先に解決されるべきは、「協議離婚」です。

離婚届を出しさえすれば離婚できるという日本の制度が、諸国と比較して突出して自由だ、というのは何度でも指摘されるべき事実です。

裁判所なりが関与せず、当事者の意思だけで離婚できる制度が続く限り、全ての子の福祉は実現できません。

養育費の未払い問題も、義務者≒父の怠慢ばかり指摘されますが、そもそも養育費について定めなくても離婚できる状態を放置しているのは国です。

養育費について定めていないのに、養育費が払われるわけがありません。

 

親権についても同様です。

当事者間で自由に親権について定めてよい制度がそのままでは、共同親権を導入しても仕方がありません。

日本では、親権者決定だけでなく、親が再婚した場合の養子縁組すら事実上自由です。

離婚した場合には親のどちらかは必ず親権を失う一方、再婚さえすれば容易に養親になれる、という制度を正当化するのは困難です。

共同親権を導入するのであれば、それぞれの親の子に対する関わりを適切に定める必要があります。

それは当事者間では不可能です。

裁判所なりが責任もって全ての離婚に関与する制度が不可欠です。

 

同様に、法務省が検討しているという「選択的」共同親権にも反対です。

「選択的」ということは、恐らく、共同親権にするか単独親権にするかは当事者≒親の意思に選択による、という意味でしょう。

それでは共同親権導入の意味が実質的に損なわれてしまいます。

既に多くの方が指摘しているように、親権とは親にとって権利より義務の側面が強いです。

共同親権という形で当事者双方にプレッシャーをかけることによって、はじめて共同親権の意味は実現できます。

「親になる」ということが決して個人の選択などではなく、生まれた子に対する義務であるとの全く同様です。

 

日本の家族法制は、既に無責任すぎるほど自由です。

そして、その自由は個人主義的な意味での自由というより、「イエ」制度と家長の権威の存続のためのもの、家庭に法が立ち入らないためのものであった、ということは家族法研究者の見解の一致するところです。

その上、さらに「共同親権」という選択肢が増えることに意味があるとは思いません。

議論すべきは、原則として「単独親権」か「共同親権」か、という二択です。「選択的」共同親権などという折衷案は虫が良すぎます。

その二択の場合、「単独親権」のメリットは、なんといっても「現に単独親権を前提に実務が動いている」ということです。

無理に現状を変えるべきではない、という保守主義を無視することはできません。

しかし、それ以外の点で、「共同親権」と比較して「単独親権」を擁護することは相当難しいと私は思っています。

 

弁護士 小杉 俊介

 

 

 

著作権法改正案についてコメントしました

2019.02.18更新

文化庁がまとめた著作権法改正案についてコメントしました。

「スクショも違法になる?」と話題になった今回の改正案についてコメントしています。

問題は、法案の中身よりも、予想される「萎縮効果」にあると考えています。

 

私のところにもよく「うっかり著作物をダウンロードしてしまったんだけど、警察に捕まりますか?」といった相談がよく来ます。

そのたび、「法律の文面だけ見たらあてはまるけど、いちいち逮捕しているほど警察はヒマじゃないですよ」といった風に答えます。

今回の改正案はまさに、末端の消費者に「これって違法かも? 警察に捕まっちゃうかも?」と思わせるのが狙いであるように見えます。

でも、それって法律の本来の在り方でしょうか?

「法の支配」よりも昔の、権威主義に戻ってませんか?というのが私の問題意識です。

 

国民をいたずらにビビらせるための法律なんて、やっぱりおかしいです。

 

弁護士 小杉 俊介

仮想通貨、FX等の投資と財産分与

2019.01.30更新

財産分与は、婚姻破綻時の財産をその時点の時価換算で2分の1にするのが原則です。

現金、預貯金などは問題なく2分の1に分割できます。

生命保険等も解約返戻金という形にすれば分割は容易です。

退職金は分与の対象となる場面は多くありません。

不動産の分割は今も昔も大問題です。

 

最近増えてきているのが、投資財産です。

投資財産を分与するのは、そう簡単ではありません。

株式投資はそんなに問題はありません。

難しいのは、仮想通貨やFX取引等の場合です。

どのように時価を計算するのか、定見はありません。

海外口座等を利用している場合、そもそも相手が財産の在りかを知らない、ということも多いです。

だからといって、隠すのは間違ってもお勧めはしません。

まずは財産分与のテーブルに載せて、いくらに換算するがふさわしいか、きちんと議論していくべきです。

 

弁護士 小杉 俊介

 

「共同親権」は必要か

2019.01.29更新

昨年10月、単独親権しか認められないのは憲法に反するとして、最高裁に上告した方のニュースがありました。

以前から、離婚後も共同親権が認められるべきかという議論はありましたが、このニュースを受けて議論が活発になっている印象です。

 

欧米では共同親権が原則である国がほとんどである点を指摘し、子の福祉のためにも単独親権のみという現状は見直されるべきとの意見

民法の成り立ちにまで立ち返り、家族への公的介入の充実が先決であるとの意見もありました。

 

私個人としては、事実認識としては後者に近いです。

共同親権の導入よりも優先的に改善される制度はあるのではないか、と考えています。

ただ、後者のように共同親権を導入した場合のデメリットにのみ目を向け、「家族への公的介入への充実が先決」と言っているだけでは、今後もずっと状況は変わらないのではないでしょうか。

具体的には、後者で正しく指摘されているとおり、比較制度的にあまりに簡単に協議離婚が可能な制度をまず変えるべきではないかと思います。

全ての離婚が、どんな形であれ公的な審査を経る制度にすることで、離婚に伴う親子の分断の問題のかなりの部分は良い方向に持っていけるはずです。

その上で、方向性としては共同親権の方向に向かっていくべきだと思います。

当たり前ですが、離婚によって親と子の縁が切られるべきではないからです。

 

弁護士のところに相談が来る離婚は、離婚全体のほんの一部です。

しかも、かなり偏った一部です。

具体的には、紛争性の高い件ばかりです。

こういった意見は、口幅ったいですが、自身の知見の偏りに無自覚なように見えてしまいます。

共同親権を求める男親の多くが元DV夫であるわけでありません。

離婚後の両親の断絶を深める方向にしか働かないこういう意見には、同業者として、明確に反対したいです。

 

弁護士 小杉 俊介

男性の側から財産分与を求める、ということ

2019.01.24更新

当然ですが、財産分与は男性から女性へ支払うものと決まっているわけではありません。

財産が多い方から少ない方に、2分の1ずつになるように払うものです。

女性の方が財産が多ければ、当然、女性から男性へ支払うことになります。

 

多いのは、共働きで、婚姻生活中は男性が主に家計を負担していた場合です。

女性の方が収入が多いというわけではなくても、結果的に、女性名義の財産が貯まっていきます。

円満なうちは良いのですが、いざ離婚となると、女性から男性へ財産を分与する必要が出てくるわけです。

 

こういうケースは多いはずです。

ところが、実際に、弁護士としての仕事でこういうケースに合う機会は少ないです。

それは、恐らく、男性が女性に対し財産分与を請求することに抵抗があるからだと思います。

女性の側も、男性から財産分与の請求を受けること自体に拒否感を示す方が多くいます。

 

その心理は、同じ人間としてよく分かります。

でも、だからこそ、弁護士の出番だと思うのです。

本人に代わって、請求すべきは請求する。

そうして、真にフェアな、あるべき離婚を実現する。

それは弁護士としての重要な仕事だと自分は考えています。

 

 

弁護士 小杉 俊介

結婚前に起業した場合

2019.01.23更新

経営者の方が離婚する場合、必ず株式も財産分与しなければいけない、というわけではありません。

財産分与はあくまで婚姻期間に形成された共有財産が対象です。

結婚前からの財産は「特有財産」なので、財産分与の対象にはなりません。

理屈上、結婚前に会社を設立していて、それ以降増資していなければ、会社の株式は全て特有財産です。

株式の値上がり分が共有財産になり得る、という問題は残りますが、そこは如何様にも争い方があります。

 

結婚前に既に会社を設立している場合、重要なのは、いかに早い段階で万一の離婚に備えた準備を整えるか、です。

結婚後に発行する株式は共有財産に含めない、既存株式の値上がり分も同様、と婚前契約で定める。

婚前契約は無理でも、株式発行時に共有財産にならないよう工夫する。

様々な対策が考えられます。

 

婚姻関係が円満な時期に、万一の離婚に備えるのは抵抗があるかもしれません。

でも、経営者の離婚は、夫婦の問題というより、会社の経営問題です。

個人の離婚が、会社や関係者に影響を及ぼす事態を避けるためなら、手は尽くされるべきだと思います。

 

弁護士 小杉 俊介

学資保険は払い続けるべきか

2019.01.20更新

離婚の財産分与に際して、意外と揉めるのが学資保険です。

子どものためのものだから、解約の上、監護親が全額受け取るべきだ。

財産分与の原則どおり、半分ずつに分けるのが当然だ。

いや、満期まで払い続けて、学資保険の目的どおり進学費用等に活用すべきだ。

毎月の支払いは養育費に含まれるのか、などなど。

 

弁護士の立場としては、離婚の際には財産はすべて清算してしまうに越したことはない、という答えになります。

学資保険についても、タイミングによっては若干損するかもしれませんが、解約して現金に換えて分けるのが一番シンプルです。

学資保険という財産は、別に他の財産と大きく性質が異なる訳ではありません。

大まかに言ってしまえば、預貯金の一種でしかありません。

「学資」という名称や、「子どものため」という美名に必要以上にこだわっても、長期的にあまり得はありません。

もちろん、人によって事情は異なりますが、原則は清算で良いと思います。

 

弁護士 小杉 俊介

株式の半分を渡さず離婚する方法はあるか

2019.01.19更新

たとえば、結婚後に一念発起して自分で会社を立ち上げ、大きくした場合。

株式は100%近く創業者である自分が持っている場合が多いでしょう。

 

結婚期間に築き上げた財産は名義に関わらず夫婦の共有財産ということになります。

離婚に際しては、半分ずつに財産分与をしなければなりません。

会社の株式も例外ではありません。

 

それで、タイトルに掲げた問題に行き着きます。

結論から言ってしまえば、この問題には明快な解決策はありません。

 

たとえば、相手方から急に離婚を言い出された場合。

何の備えもない状況から出来ることは、たとえば「財産形成にあたっての配偶者の寄与の小ささ」を主張することくらいしかありません。

その主張だけで、「夫婦共有財産」という原則を崩すのは、相当難しいです。

 

大事なのは、「事前の備え」です。

関係が悪化してから何年もかけて離婚する、という意味ではありません。

関係が悪化する前から、将来の離婚の可能性に備え、ご自身の状況にあわせた対策を取っておく、ということです。

 

対策方法は様々です。

状況にあわせて考えていくしかありません。

その段階から相談をいただければ、私たちにもできることはたくさんあります。

 

弁護士 小杉 俊介

男性側に立った離婚問題の解決を

一時の迷いや尻込みで後悔しないためにも、なるべく早い段階でご相談ください。