離婚相談ブログ

退職金は財産分与に含まれるか

2023.03.01更新

仮に離婚した場合、財産分与はいくらくらいになるか。試算する上で見落としたがちなのが、退職金です。

退職金相当額を財産分与の対象に含まれるか、かつては議論がありました。
退職金を受け取り済みの場合は、財産分与の対象に含まれる。
では、退職前の場合はどうなるのか。
定年退職までまだ10年以上ある場合はどうか。
公務員と会社員では異なるのか。
同じ会社員でも、安定した大会社とベンチャーでは異なるのか。
論点は色々ありました。
現在では、「婚姻破綻時に仮に退職した場合、退職金はいくらになるか」でほぼ決まっています。
予想される退職までの期間や、勤務先の事情はよほどのことがない限り考慮されません。

この影響は甚大です。
会社勤めの場合、財産と言っても限られています。
財産の大部分を占めるのは不動産ですが、残ローンを差し引けば価値は無いか、大した金額にならないことが多いでしょう。
ローンの支払いに追われていれば、貯金も大した金額にはなりません。
だから、そもそも財産分与の対象になる財産はないと思っていたら、実は退職金があった。
退職金を計算してみたら、実は1000万円を優に超える金額だった。
財産分与としてその2分の1を払えと言われても、そんな手持ちはない。
そういった事態も起こり得ます。

退職金は、給与の後払いである。
婚姻期間中にも、その期間に相当する退職金相当額が潜在的財産として蓄積されている。
婚姻期間中に形成された財産だから、財産分与の対象となる。
裁判所の理屈はおおよそ上記のとおりです。

しかし、この理屈には疑問があります。
退職金は給与の後払いである。
それはそうだとしましょう。
しかし、後払いには後払いにする理由があるはずです。
社員に長く在籍してもらいたい場合、長く在籍することへのインセンティブを付与する。
逆に、あまり長く在籍してほしくない場合には、早期退職に多めの退職金を支払う制度もあり得ます。
「不祥事による解雇の場合には退職金を支給しない」とすることで、不祥事を防止するという狙いもあるでしょう。
後払いには、後払いにするだけの理由があるのです。

その理由を考慮せず、給与の後払いであるという点だけに着目し、分与対象財産に含める。
これは少々乱暴すぎます。
配偶者の退職金受給以前に離婚するという選択をしたのに、退職金相当額は受け取ることができる。
これでは、会社が給与の一定部分を後払いにした趣旨が損なわれてしまいます。

裁判所が重視しているのは、恐らく理屈ではありません。
少しでも財産分与の金額を大きくし、離婚による経済的ダメージを軽減する。
その目的が先にあり、理屈はその後に付いてきたという印象を強く受けます。

しかし、財産分与の金額を大きくすることは受け取る側にとっては利益ですが、支払う側にはダメージです。
理屈にならない理屈で、一方当事者に偏った負担を押し付けることが、正当だとは思いません。

 

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