離婚相談ブログ

「連れ去り」よりも恐れるべきこと

2023.03.18更新

「連れ去り」という言葉があります。

配偶者が突然、子を連れて別居する行為を指します。

別居と同時に代理人から受任通知が届き、配偶者と連絡が取れなくなる。

子の親権を失う前提での離婚協議を余儀なくされる。
そういった一連の流れを含め「連れ去り」という言葉が使われることもあります。

少し前まで、いわゆる「連れ去り」にあった方からの相談は非常に多かったです。
しかし、最近になってやや減っている印象があります。
件数が減っているだけでなく、連れ去りの態様もあまり乱暴ではなくなってきているようにも感じます。
弁護士からの受任通知の文言も、以前よりソフトになってきてもいるようです。

その代わり、最近増えている印象があるのが「追い出し」です。
配偶者から、自宅から出て行くよう求められる件が増えているように感じるのです。

「追い出し」は「連れ去り」よりもさらに深刻です。
家庭を失うだけでなく、自宅まで事実上失うことになりかねないからです。

「追い出し」は、子の意思を盾に行われることもあります。
子もあなたに出て行ってほしいと言っている。
子のためにも、出て行ってくれ。
そう言われると、子を大切に思う人ほど抵抗は難しいでしょう。
場合によっては、子の口から直接「出て行ってほしい」と言わせる人もいます。

子を離婚紛争に巻き込まないためにも、自分が身を引いたほうがいいのではないか。
そう考えるのは、思うツボです。

「追い出し」でさらに深刻なのは、追い出された当人がしばしば「自分の意思で出て行った」と思っていることです。
家を出る経緯をよく聞くと、追い出されたとしか思えない。
相手には、明らかに配偶者を追い出す意図があった。
それでも、最後は自分から家を出た以上、自分は追い出されたのではない。
「追い出された」自覚がないと、対応に後手を踏むことになりかねません。

さらに悪いのが、裁判所含め第三者も、「追い出し」被害者を「自分で家を出た人」と判断するケースが多いことです。
実態をきちんと見極める必要があります。

最も恐れるべきは「連れ去り」よりも「追い出し」です。
家を出てしまう前に、まずご相談いただければと思います。

退職金は財産分与に含まれるか

2023.03.01更新

仮に離婚した場合、財産分与はいくらくらいになるか。試算する上で見落としたがちなのが、退職金です。

退職金相当額を財産分与の対象に含まれるか、かつては議論がありました。
退職金を受け取り済みの場合は、財産分与の対象に含まれる。
では、退職前の場合はどうなるのか。
定年退職までまだ10年以上ある場合はどうか。
公務員と会社員では異なるのか。
同じ会社員でも、安定した大会社とベンチャーでは異なるのか。
論点は色々ありました。
現在では、「婚姻破綻時に仮に退職した場合、退職金はいくらになるか」でほぼ決まっています。
予想される退職までの期間や、勤務先の事情はよほどのことがない限り考慮されません。

この影響は甚大です。
会社勤めの場合、財産と言っても限られています。
財産の大部分を占めるのは不動産ですが、残ローンを差し引けば価値は無いか、大した金額にならないことが多いでしょう。
ローンの支払いに追われていれば、貯金も大した金額にはなりません。
だから、そもそも財産分与の対象になる財産はないと思っていたら、実は退職金があった。
退職金を計算してみたら、実は1000万円を優に超える金額だった。
財産分与としてその2分の1を払えと言われても、そんな手持ちはない。
そういった事態も起こり得ます。

退職金は、給与の後払いである。
婚姻期間中にも、その期間に相当する退職金相当額が潜在的財産として蓄積されている。
婚姻期間中に形成された財産だから、財産分与の対象となる。
裁判所の理屈はおおよそ上記のとおりです。

しかし、この理屈には疑問があります。
退職金は給与の後払いである。
それはそうだとしましょう。
しかし、後払いには後払いにする理由があるはずです。
社員に長く在籍してもらいたい場合、長く在籍することへのインセンティブを付与する。
逆に、あまり長く在籍してほしくない場合には、早期退職に多めの退職金を支払う制度もあり得ます。
「不祥事による解雇の場合には退職金を支給しない」とすることで、不祥事を防止するという狙いもあるでしょう。
後払いには、後払いにするだけの理由があるのです。

その理由を考慮せず、給与の後払いであるという点だけに着目し、分与対象財産に含める。
これは少々乱暴すぎます。
配偶者の退職金受給以前に離婚するという選択をしたのに、退職金相当額は受け取ることができる。
これでは、会社が給与の一定部分を後払いにした趣旨が損なわれてしまいます。

裁判所が重視しているのは、恐らく理屈ではありません。
少しでも財産分与の金額を大きくし、離婚による経済的ダメージを軽減する。
その目的が先にあり、理屈はその後に付いてきたという印象を強く受けます。

しかし、財産分与の金額を大きくすることは受け取る側にとっては利益ですが、支払う側にはダメージです。
理屈にならない理屈で、一方当事者に偏った負担を押し付けることが、正当だとは思いません。

 

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