離婚相談ブログ

財産分与が「不意打ち」でいいのか

2025.11.20更新

「不意打ち」という言葉があります。

辞書によれば

「相手のすきをついて攻めること」

を意味します。

 

「不意打ち」という言葉は民事訴訟に関する議論でも使われます。

民事訴訟での「不意打ち」とは、「弁論主義」を分かりやすく説明するための言葉です。

弁論主義とは、

「裁判所が当事者の主張していない事実を認定してはならない」

という民事訴訟の原則です。

なぜ当事者の主張していない事実を認定してはならないのか。当事者の主張していない事実を唐突に裁判所が認定して判決を下してしまったら、当事者にとって「不意打ち」になるから。というのが、法律の議論における「不意打ち」という言葉の代表的な使われ方です。

 

離婚における財産分与も、多くの当事者にとって「不意打ち」になってはいないでしょうか。

財産分与が「不意打ち」になってしまう理由は、「共有財産」という曖昧な概念のせいではないでしょうか。

 

財産分与とは、

「…離婚した者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」(民法第768条1項)

権利のことです。

なぜ財産の分与を請求することができるのか。

その理由は一般に

「婚姻期間中に築き上げた財産は、名義が夫婦どちらであるかに関わらず共有財産だから」

と説明されます。

ところが、「婚姻期間中に築いた財産は共有」というようなことは、法律のどこにも書いてありません。それどころか、民法には180度逆にも読めることが書いてあります。

 

「夫婦の一方が…婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」(民法762条1項)

 

この条文は普通に読めば

「夫婦いずれかが自分で稼いだ財産は、その人の単独所有である」

と書いてあります。

同条2項にはさらにダメ押しでこう書いてあります。

 

「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」

 

この条文を裏返せば、

「夫婦のどちらに所属するか明らかな財産は、共有財産ではない」

となります。

 

夫婦といえど財産は原則的に個人のもの。共有ではない。

これは夫婦別産制といい、民法の原則の1つです。

 

それなのに、離婚となると急に「婚姻期間中に築いた財産は共有財産」という話が出てきます。財産分与がしばしば「不意打ち」になってしまうのは、「共有財産」という概念が唐突に出てくるからです。昨日まで夫婦別産だったはずなのに、今日からは共有ということになってしまう。

 

離婚時の財産分与自体は、世界的にも一般的な制度です。

でも、たとえばアメリカのカリフォルニア州法では、そもそも

「婚姻期間中に取得した財産は原則的にコミュニティ・プロパティ(共有財産)」

とされています。

どちらか一方の単独名義で不動産を購入したとしても、基本的に「共有財産」として登録される。そもそも、婚姻期間中の収入時代が共有扱いで、2名分の収入を合算した上で双方に課税されることになっている。

そういった制度では、日本でのような「不意打ち」は起こりにくい。結婚を決める際から「何が共有財産で、何が特有財産か」を意識せざるを得ないからです。

 

「共有財産」という言葉は、普通はその財産が共有であることを表します。カリフォルニア州法におけるコミュニティ・プロパティ(共有財産)はまさにそういう意味です。

しかし、日本の財産分与時に使われる「共有財産」という言葉はそういう意味ではない。財産分与の対象となる財産のことを「共有財産」と呼んでいるに過ぎない。言葉の字面と意味がずれてしまっています。

 

どのみち離婚時には財産分与を行うんだから、結果は同じじゃないか。不意打ちだろうと何だろうと結果が変わらないならいいじゃないか、とも思えます。

しかし、離婚事件を多数扱う中で、そうとは言えない件を何度も見てきました。

 

財産分与が不意打ちになってしまうことの問題は、まず第一に、離婚後の予測が立ちにくいことです。婚姻中、日頃から夫婦の財産情報をきちんと共有していれば問題ありません。しか、そんな夫婦ばかりではない。いやむしろ、財産情報を共有している夫婦の方が少数派かもしれません。離婚に至る夫婦の場合はなおさらです。

婚姻期間中は夫婦別産なので、配偶者がどれくらい財産を持っているか知らない。なので、離婚したらいくら分与を受けられるかも分からない。離婚協議や離婚調停の中で財産の開示を受けてはじめて、自分がどれくらい受け取れるのか知ることになる。そういうケースは珍しくありません。

多額の分与を受けられると思って離婚協議に踏み込み、別居もした後で、大した金額を受け取れないことを知る。でも今さら後戻りできない。そういう場合、しばしば金額が少ないことへの怒りが元配偶者に向かいますが、怒っても始まりませんし、そもそも元配偶者が悪いのでもありません。制度自体の問題です。

財産分与を受け取る側であることを当然の前提として調停を申し立てたら、相手の財産が予想外に少なく、支払う側だった。そんなケースすらあり得ます。

 

財産分与が不意打ちになってしまうことには、他にも大きな問題があります。離婚に備え日頃から財産情報を握っていた側と、そうでない側との間の情報格差が、不公平な結果に繋がりかねないことです。

夫婦の一方が常に離婚を意識して財産分与への準備も怠らず、もう一方はそのような意識すらない。そういうケースでは、しばしば不公平な結果になってしまいます。何が財産分与の対象になるか日頃から意識し、一方で相手はそのような意識自体がないという場合なら、財産分与時により有利になるよう工夫する方法はいくらでもあります。詳しくは書きませんが。

 

もっとも大きな問題は、財産分与の「不意打ち」が相手への不信感を生み、紛争自体を深刻化させるリスクがあることです。こんなに財産が少ないなんておかしい。どこかに隠してるんじゃないか。過去の結婚生活にまで遡る疑心暗鬼が生まれ、紛争が長期化してしまう。残念ながら、そういうケースもあります。

 

財産分与が不意打ちにならないよう、当事者にできることには限界があります。より透明性を高め、不意打ちにならないよう制度自体が改善されるべきです。

離婚と破産

2025.07.28更新

「離婚というのは、会社でいえば破産です。」

財産分与について説明する際、この表現をよく用います。

 

離婚によって夫婦という組織は解散になる。

解散にあたって、残っていた財産はいったんすべて供出する。

供出された財産をルールに従って分配する。

こう見ると離婚と法人破産はよく似ています。

 

違うのは、破産では財産は債権者に分配されるのに対し、離婚では当事者間で分配する点です。

離婚では財産の半分は手許に返ってきます。

結果だけ見れば離婚と破産はあまり似ていません。

しかし、財産はいったん供出し、決まりに基づき分配するという流れは同じです。

 

「離婚というのは、会社でいえば破産です。」

この表現を用いるのは、財産をいったん供出する、テーブルに載せるという点をイメージしていただきたいからです。

いくら分与するか。

どう分けるか。

その議論は、まず財産をテーブルに載せてから、です。

 

自分名義の財産を喜んでテーブルに載せたい人はまずいません。

財産をきちんとテーブルに載せてもらうためには、強制力をともなう制度が必要です。

破産では、財産隠しに対する罰則などの制度が整備されています。

 

一方、離婚はこれまで、正直なところ制度が未整備でした。

制度が未整備なことが、相手に対する疑心暗鬼を生む。

疑心暗鬼が議論を長期化させ、時に泥沼化させる。

そういった件は珍しくありませんでした。

 

来年、改正民法が施行されるとともに、改正家事事件手続法も施行されます。

改正法では、「情報開示命令」という制度が新設されます。

これは、調停中に裁判所が当事者に対し財産に関する情報の開示を命令できる、という制度です。

新制度によって、財産分与の議論がより公平で迅速なものになることを期待しています。

「連れ去り」よりも恐れるべきこと

2023.03.18更新

「連れ去り」という言葉があります。

配偶者が突然、子を連れて別居する行為を指します。

別居と同時に代理人から受任通知が届き、配偶者と連絡が取れなくなる。

子の親権を失う前提での離婚協議を余儀なくされる。
そういった一連の流れを含め「連れ去り」という言葉が使われることもあります。

少し前まで、いわゆる「連れ去り」にあった方からの相談は非常に多かったです。
しかし、最近になってやや減っている印象があります。
件数が減っているだけでなく、連れ去りの態様もあまり乱暴ではなくなってきているようにも感じます。
弁護士からの受任通知の文言も、以前よりソフトになってきてもいるようです。

その代わり、最近増えている印象があるのが「追い出し」です。
配偶者から、自宅から出て行くよう求められる件が増えているように感じるのです。

「追い出し」は「連れ去り」よりもさらに深刻です。
家庭を失うだけでなく、自宅まで事実上失うことになりかねないからです。

「追い出し」は、子の意思を盾に行われることもあります。
子もあなたに出て行ってほしいと言っている。
子のためにも、出て行ってくれ。
そう言われると、子を大切に思う人ほど抵抗は難しいでしょう。
場合によっては、子の口から直接「出て行ってほしい」と言わせる人もいます。

子を離婚紛争に巻き込まないためにも、自分が身を引いたほうがいいのではないか。
そう考えるのは、思うツボです。

「追い出し」でさらに深刻なのは、追い出された当人がしばしば「自分の意思で出て行った」と思っていることです。
家を出る経緯をよく聞くと、追い出されたとしか思えない。
相手には、明らかに配偶者を追い出す意図があった。
それでも、最後は自分から家を出た以上、自分は追い出されたのではない。
「追い出された」自覚がないと、対応に後手を踏むことになりかねません。

さらに悪いのが、裁判所含め第三者も、「追い出し」被害者を「自分で家を出た人」と判断するケースが多いことです。
実態をきちんと見極める必要があります。

最も恐れるべきは「連れ去り」よりも「追い出し」です。
家を出てしまう前に、まずご相談いただければと思います。

退職金は財産分与に含まれるか

2023.03.01更新

仮に離婚した場合、財産分与はいくらくらいになるか。試算する上で見落としたがちなのが、退職金です。

退職金相当額を財産分与の対象に含まれるか、かつては議論がありました。
退職金を受け取り済みの場合は、財産分与の対象に含まれる。
では、退職前の場合はどうなるのか。
定年退職までまだ10年以上ある場合はどうか。
公務員と会社員では異なるのか。
同じ会社員でも、安定した大会社とベンチャーでは異なるのか。
論点は色々ありました。
現在では、「婚姻破綻時に仮に退職した場合、退職金はいくらになるか」でほぼ決まっています。
予想される退職までの期間や、勤務先の事情はよほどのことがない限り考慮されません。

この影響は甚大です。
会社勤めの場合、財産と言っても限られています。
財産の大部分を占めるのは不動産ですが、残ローンを差し引けば価値は無いか、大した金額にならないことが多いでしょう。
ローンの支払いに追われていれば、貯金も大した金額にはなりません。
だから、そもそも財産分与の対象になる財産はないと思っていたら、実は退職金があった。
退職金を計算してみたら、実は1000万円を優に超える金額だった。
財産分与としてその2分の1を払えと言われても、そんな手持ちはない。
そういった事態も起こり得ます。

退職金は、給与の後払いである。
婚姻期間中にも、その期間に相当する退職金相当額が潜在的財産として蓄積されている。
婚姻期間中に形成された財産だから、財産分与の対象となる。
裁判所の理屈はおおよそ上記のとおりです。

しかし、この理屈には疑問があります。
退職金は給与の後払いである。
それはそうだとしましょう。
しかし、後払いには後払いにする理由があるはずです。
社員に長く在籍してもらいたい場合、長く在籍することへのインセンティブを付与する。
逆に、あまり長く在籍してほしくない場合には、早期退職に多めの退職金を支払う制度もあり得ます。
「不祥事による解雇の場合には退職金を支給しない」とすることで、不祥事を防止するという狙いもあるでしょう。
後払いには、後払いにするだけの理由があるのです。

その理由を考慮せず、給与の後払いであるという点だけに着目し、分与対象財産に含める。
これは少々乱暴すぎます。
配偶者の退職金受給以前に離婚するという選択をしたのに、退職金相当額は受け取ることができる。
これでは、会社が給与の一定部分を後払いにした趣旨が損なわれてしまいます。

裁判所が重視しているのは、恐らく理屈ではありません。
少しでも財産分与の金額を大きくし、離婚による経済的ダメージを軽減する。
その目的が先にあり、理屈はその後に付いてきたという印象を強く受けます。

しかし、財産分与の金額を大きくすることは受け取る側にとっては利益ですが、支払う側にはダメージです。
理屈にならない理屈で、一方当事者に偏った負担を押し付けることが、正当だとは思いません。

 

「今後の窓口は当職となります。」

2023.02.22更新

配偶者に代理人弁護士が就任し、受任通知書が届いたとします。

受任通知書には、ほぼ100%の確率で、タイトルのような文言が入っています。

今後、離婚に関する件は弁護士に連絡せよ、本人に直接連絡するな、という意味です。

 

協議を進めるためには窓口は統一されていたほうが良い。

それは間違いありません。

本人にも弁護士にも連絡してしまったら、混乱してしまいます。

双方のためにも窓口は1つにすべきです。

 

ただし、この「窓口指定」には法的な強制力はありません。

従うかどうかはあくまで任意です。

 

また、弁護士は何でもかんでも代理するわけではありません。

あくまで委任の範囲、一般的には離婚に関する件のみです。

離婚に直接関係しない事柄については、そもそも対象に含まれません。

 

代理人の介入後は、当事者同士のやり取りは原則禁止というのは誤解です。

同居継続中の場合。

小さいお子さんがいらっしゃる場合。

どうしても当事者同士で連絡を取り合う必要がある場面はあります。

そのような場合まで、代理人を通していたらキリがありません。

 

何でもかんでもコミュニケーションを代理人が巻き取ってしまうのは、業界の悪弊だと思います。

特にお子さんがいる場合、離婚後も子の父母としての関係は続きます。

離婚協議中だからといって、何でもかんでも代理人を通すのは、当事者の利益にもなりません。

家を出てはいけない

2023.02.14更新

だいぶ前から夫婦の間で離婚の話は出ている。

離婚の話になると揉めてしまい、家庭の雰囲気は良くない。

未成年の子にもストレスを与えている。

配偶者からは、離婚より前に家を出るよう暗に求められている。

子に悪影響があってはいけないし、自分もこのまま同居を続けるのはストレスだ。

離婚協議をスムーズに進めるためにも、自分1人が家を出たほうが良いとも思う。

家を出て大丈夫か。

 

上記のような相談を受けることがあります。

答えは1つ、「家を出ないでください」です。

家の所有者だったり賃借人だったりする場合は「絶対に」です。

 

理由は、家を明渡してしまったらまず家には戻れないからです。

家を失った状態が離婚協議の出発点になります。

 

自分が家にいなくても、住宅ローンや家賃は当然発生し続けます。

別居すると婚姻費用も請求されることが多いです。

さらに、自分の住む所も確保しなければならず、新たに家賃も発生します。

この三重の経済的負担は非常に厳しいです。

 

負担の重さに耐えかね、早期に離婚を成立させて負担を免れようとしても、そう上手くはいきません。

相手にしてみれば、自分の住環境は変わらず、不仲な配偶者だけ目の前からいなくなった状況です。

言葉は悪いですが、「追い出し」に成功したわけです。

相手に住居費を負担させつつ、じっくり検討すれば良い。

もはや離婚を急ぐ理由がありません。

 

では、せめて相手も家から出てもらい、家自体を処分してしまおうとしても、これも上手くいきません。

家の所有者が誰であれ、現に住んでいる人を追い出すのは非常に困難です。

家に関する経済的負担だけが延々と続くことになります。

 

離婚成立まで思い経済的負担を負った側と、住居費すら負担しないで良い相手方。

そこまでパワーバランスの崩れた二者間で、対等な協議など期待できません。

離婚協議でも、不利な条件を呑まざるを得なくなる恐れもあります。

 

家は城です。

自ら城を明け渡しては、戦には勝てません。

シンプルに言えばそういうことです。

 

もちろん、同居を続けることにはストレスが伴います。

子に負担をかけてもいるでしょう。

それでも、自分から家を出てしまうことのリスクとは比較はできません。

やはり、家を出てはいけません。

 

 

「共有財産」は共有ではない

2023.02.08更新

民法第762条
①夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
②夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

 

離婚する際、どちらかが請求すれば、原則、婚姻期間に形成された財産は双方に分与されます。

いわゆる財産分与です。

一般的には夫婦の「共有財産」を2分の1にすることになります。

 

財産分与の対象となる財産が「共有財産」と呼ばれることがあります。

しかし、この言葉は誤解を生みやすく、問題が大きいです。

理由は単純で、共有でもなんでもないからです。

 

自宅内の家電や家具などは確かに2人の共有物ということで良いでしょう。

しかし、たとえば預金残高は文句なく口座名義人に属します。

夫婦だからといって、共有などではありません。

不動産もそうです。

自宅の所有者は、登記されている所有者です。

それ以上でも以下でもありません。

離婚の場面で「共有財産」と呼ばれる財産は、ほぼ共有ではないのです。

 

では、なぜ「共有財産」と呼ばれるのか。

恐らく、「もともと夫婦2人で共有していた」からこそ2分の1ずつ分与される、ということだと思われます。

しかし、この理屈はおかしい。

財産分与というのは、分与する時点で新たに財産の所有権を移動させることです。

分与する前は、やはりどちらかの単独所有なのです。

2分の1ずつに分与するという結論から遡及して、分与以前から「共有財産」だったとするのは論理が逆転しています。

 

単に論理が逆転しているというだけではありません。

「共有財産」という言葉は、当事者に誤った先入観を与えていることがあります。

実際には共有ではないのに、共有物であるとの認識に立った主張がされることがあるのです。

 

代表例は以下のようなパターンです。

自宅はXの単独所有で、配偶者Yは自宅を出ていき別居に至った。

自宅に残ったXが、自宅を売却することにした。

この場面で、Yが「共有財産を勝手に売却するな」と言ってくる。

でも、これはおかしいです。

自宅はXの所有物なのですから、処分するかどうかはXが決めることです。

「共有財産」という言葉が、自分が権利者であるかのような誤解を生んでいるのです。

 

自宅の買い手である第三者の立場から見れば、問題はより分かりやすいです。

登記上の単独所有者が、不動産を売りに出していたので買った。

その後で、登記に載っていない売り手の配偶者から「共有財産だから勝手に買うな」と言われたらたまったものではありません。

 

結局、「共有財産」という言葉が間違っている、ということに尽きます。

「共有財産」とは、冒頭に挙げた民法762条によれば、「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」のことです。

上で例に挙げた家電や家具類のことです。

不動産や預金などは「共有財産」ではありません。

 

財産分与の対象となる財産、という意味で「分与対象財産」という言葉も使われます。

こちらなら誤解の余地はありません。

離婚と共に財産分与が実施されてはじめて、所有権が移転する。

それまでは夫婦いずれかの単独所有である。

それに尽き、「共有財産」などという紛らわしい言葉を使う必要はどこにもありません。

 

分与対象財産のことを共有財産と呼ぶのは止めるべきです。

単純に間違っています。

受任通知書に「離婚」の文字が入っていない場合

2023.02.06更新

配偶者が出て行き、ほどなく弁護士から受任通知書が届いたとします。

配偶者の代理人に就任したこと。

以後は自分が窓口になること。

配偶者はこれこれこういう理由で別居を決めたこと。

婚姻費用の支払いを請求すること。

おおよそ上記のような内容が書いてあります。

 

一通り最後まで読んでから、あることに気付きます。

「”離婚”の文字がどこにも入ってない」

別居して弁護士までつけるのだから、離婚前提の話だと普通は思います。

ところが、どこにも「離婚」という文字がない。

時々こういう受任通知書を見かけます。

 

理由はシンプルです。

弁護士が、「婚姻費用分担請求」しか受任していないのです。

家庭裁判所では、「離婚調停」と「婚姻費用分担調停」は別の手続きです。

そのうち、後者から受任していない。

だから、受任通知書に離婚の文字が入っていないのです。

 

別の法的請求、別に手続きなのだから、婚姻費用分担請求だけを受任することは特に問題ない。

そういう考え方もあるだろうと思います。

しかし、そもそも夫婦には同居義務があります。

自ら同居義務を放棄して別居するのですから、夫婦関係を継続する意思は通常ないはずです。

夫婦関係を継続する意思がないということは、離婚意思があるということです。

夫婦関係を継続する意思はないが、離婚意思もないという状態は通常予定されていません。

なのに、離婚については受任せず、婚姻費用分担請求だけを受任する。

婚姻費用について調停・審判で決まったら、そこで代理業務は終わり。

これが筋の通った考え方だとは思えません。

 

問題が顕在化するのは、婚姻費用分担請求を受けた側が、離婚を請求する場合です。

婚姻費用を請求してきた代理人が、「自分は離婚は受任していない」と言う。

窓口もないため、協議がなかなか進まない。

こういう事態に陥ってしまうことがあります。

 

根本には、別居に至る経緯を考慮することなく、一律に婚姻費用分担義務を課し、さらに強力な執行力まで付与する制度の問題です。

そのような制度のおかげで、婚姻費用の確保は決して難しくありません。

時間もそれほどかかりません。

その一方で、離婚は時間と手間がかかる割に、金銭的な見返りが必ずある訳でもでありません。

そこに、婚姻費用分担請求だけを受任するインセンティブが生まれます。

 

でも、それでいいのでしょうか。

少し違う話をします。

今は下火になりましたが、過払い金請求という類型があります。

詳細は省きますが、過払い金請求は手間も時間もかからず回収可能性も高い。

弁護士にとって非常に儲かる分野でした。

しかし、過払い金はそもそも借金問題の一部です。

高利の消費者金融から借りたため、払い過ぎた金を取り戻すのが「過払い金」です。

過払い金がある依頼者は、同時に借金問題も抱えていることが一般的です。

ところが、借金問題の解決、債務整理には手間も時間もかかります。

その割に、過払い金ほどの実入りもない。

そこで、債務整理のうち過払い金請求だけ受任する弁護士が出るようになりました。

こういった行為は業界内で「ツマミ食い」と呼ばれ、問題視されました。

 

離婚問題のうち、婚姻費用分担請求だけ受任する行為は、「ツマミ食い」によく似ています。

 

「本書面到達から1週間以内に連絡をください」

2023.02.05更新

ある日、配偶者の代理人を名乗る弁護士から「受任通知書」なる書面が内容証明郵便で届く。

書面には、配偶者は離婚を希望しており、今後の窓口は代理人が務めると書いてある。

場合によっては、婚姻費用を請求する旨の記載もある。

これが、弁護士を介しての離婚協議が始まる代表的なパターンです。

 

その書面の末尾のあたりには、決まって表題のようなことが書いてあります。

「ご連絡いただけない場合には、やむを得ず法的措置を取ります。」

というようなことが書いてある場合もあります。

私自身、何度も書きました。

 

この「1週間」という期間の根拠はなんでしょうか。

実は、「何となく」です。

特に根拠はありません。

 

1週間という期間を守らなかったことによる不利益は何でしょうか。

実は明確にこれというものはありません。

家庭裁判所は調停前置と言って、まず調停を経る必要があります。

調停はあくまで話し合いです。

当事者間で話し合うのと何ら変わりません。

 

調停で話がまとまらなければ場合によって訴訟になります。

しかし、訴訟になったからといって必ずしも不利益ではありません。

財産分与は2分の1,養育費は算定表どおり。

お金に関するルールは訴訟になっても変わりません。

 

当事者間で話し合っても、調停になっても、訴訟になっても特に有利でも不利でもありません。

1週間という期限を守らないことによる不利益は、少なくとも法的にはありません。

 

もちろん、受け取った受任通知書を無視しても良いと言っているわけではありません。

きちんと対応することが、離婚自体の解決のために重要なのは当然です。

ただ、1週間という期間の短さに焦り、判断を誤ることは避けるべきです。

離婚紛争に子を巻き込んでいるのは誰か

2022.10.02更新

子のいる夫婦の離婚調停に行くと、家庭裁判所で一本のビデオを見せられます。

「離婚をめぐる争いから子どもを守るために」と題された5分ほどの映像です。

Youtubeなどでも公開されていますので、誰でも見ることができます。

 

子どもの前で離婚について言い争いするのは止めよう。

子どもに対し「お母さんとお父さん、どっちと暮らしたい?」などと選択を迫るようなことはしてはいけない。

おおよそ、このような内容をまとめたビデオです。

 

私は、このビデオを待合室等で見るたびに複雑な思いになります。

ビデオの主張自体が間違っているとは思いません。

ただでさえ、親の離婚は子の心を傷つけます。

子に選択を迫り、責任を押し付けるのは大人として言語道断です。

離婚紛争に子どもを可能な限り巻き込まないことは、大人の義務です。

ビデオの主張自体には賛成します。

 

一方で、「離婚紛争に子を巻き込まない」というルールは、実際の紛争では守られていないケースが非常に多いです。

離婚についての話し合いに子どもが同席させられる。

一方の親がいない場で、その親に関する悪い情報が吹き込まれる。

「子どもが嫌だと言っているから」という理由で家から追い出される。

そういったケースが目につきます。

 

上記ビデオ自体、親に対し「そういった行動は良くない」と啓蒙する目的でつくられたものでしょう。

しかし、このビデオに効果があるかと言えば、私は大いに疑問です。

なぜなら、実際には上記のような親の行動の原因は「知識不足」「啓蒙が足りていないから」ではないことが多いからです。

「離婚紛争に子を巻き込んではいけない」ということを知らないからそういう行動を取る、というわけではないケースが多いのです。

悪いことだと知った上で、敢えてそのような行動を取っているのです。

 

それは何故か。

答えはシンプルです。

「その方が離婚紛争で有利だから」です。

離婚紛争に子どもを巻き込み、自分の側につけたほうが有利に働くことを知っているから、巻き込むのです。

「知っててやってる」のです。

 

なぜ、子どもを自分の側につけると有利なのか。

理由は1つではありませんが、私は最大の理由は「子どもの権利主体性が尊重されていないから」だと考えています。

子どもは親の離婚の利害関係者です。

自力で生きるのが難しく親に頼るしかないという意味で、最大の利害関係者と言ってもよい。

それにも関わらず、現行の離婚制度では、子どもを権利主体として扱っていません。

子ども独自の利害について主張するどころか、意見を表明する機会すらろくに与えられていません。

家事事件手続法65条に、子の意思を考慮する努力義務が定められていますが、まったくもって不充分です。

主体的に意見を表明する機会すら、実質的に与えられていないのです。

 

その結果どうなるか。

子ども自身が意見を表明できないのを良いことに、当事者双方が勝手に子の意見を代弁し始めるのです。

「子どもはこちらと住みたいと言っている」

「子どもは相手に会いたくないと言っている」

「子どもは今の家を出て行きたくないと言っているので、相手に出ていってほしい」

などなど。

子どもという神様のご託宣を勝手に代弁する巫女のようです。

 

子どもの代弁者という最強の地位を手に入れるための有効な戦法は何か。

子どもを離婚紛争に巻き込み、自分の側につけ、相手と対立するように仕向けることです。

子どもを離婚紛争に巻き込む親は上記の原理に基づき行動しています。

裁判所のビデオでの啓蒙程度でどうなる話ではないのです。

 

結局、子どもを権利主体として扱わずろくに意見表明もさせず、そのくせ親が代弁する子の意思は過大に評価するという、裁判所の運用が諸悪の根源です。

裁判所の運用自体が、親に「子どもを離婚紛争に巻き込む」動機を作り出しているのです。

自ら動機を作り出しておきながら、ビデオ程度でお茶を濁す。

裁判所の対応は欺瞞そのものです。

 

その欺瞞の最大の犠牲者は、もちろん、離婚紛争に巻き込まれる子どもです。

 

 

男性側に立った離婚問題の解決を

一時の迷いや尻込みで後悔しないためにも、なるべく早い段階でご相談ください。