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家庭裁判所の「調査」とは何か

2022.02.23更新

離婚事件では、未成年の子の親権、監護権、面会交流などが争われることが多いです。

未成年の子は、離婚事件の当事者ではありません。

そこで、子の状況について、裁判所による調査が実施されることになります。

 

調査官という専門の裁判所職員が、調査を担当します。

調査の内容は以下のような感じです。

 

・親双方の聞き取り

・子ども本人の聞き取り

・家庭訪問(別居の場合は双方のことも)

・監護補助者(祖父母など)の聞き取り

・学校への聞き取り(担任の先生など)

 

上記以外にも、子の主治医への聞き取り調査などが実施されることもあります。

 

子の聞き取り調査では、特に「子の意向調査」の実施も求められます。

「どちらの親と暮らしたいか」

という点を子に聞くのが、子の意向調査です。

 

もちろん、このような質問をぶつけること自体、子を傷つける恐れが大いにあります。

そこで、必ずしもストレートな質問ではなく、色々と工夫した聞き方がされるようです。

 

上記のような調査の結果は、調査報告書という書面にまとめられます。

調査報告書は、結論部分に「調査官の意見」が明記される形式になっています。

この意見が、裁判官によってひっくり返されることは決して多くありません。

そういう意味で、結論を決めているのは調査官である、とすら言ってよいかもしれません。

 

調査官による調査が、その持つ重みほどに充実した内容なのか。

事実にきちんと踏み込めているのか。

本当に子供の福祉を最も重視できているのか。

疑問がないわけでは決してありません。

しかし、現実として結論自体を決めるほどの重要性を持っていることは、事前に認識しておいたほうが良いです。

協議離婚で決めるべきこと

2022.02.16更新

民法766条第1項

「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」

 

離婚には、協議離婚と、裁判所での離婚の2種類があります。

弁護士が主に扱うのは後者です。

一方、離婚全体の9割近くを占めているのは前者の「協議離婚」です。

役所に離婚届を提出さえすれば、協議離婚は成立です。

 

協議離婚の際、決めなければいけないことは何か。

それを定めたのが冒頭の民法766条1項と、親権に関する第819条1項です。

1.子の親権者となるのは父母どちらか

2.子を監護するのは父母どちらか

3.面会交流

4.養育費

5.その他子の監護について必要な事項

条文からは、最低でも以上の5点は定めないといけない、と読み取れます。

 

ところが、法律の定めに関わらず、協議離婚の実務はそうなっていません。

離婚届の書式には、1の記載欄しかありません。

2~4については記載欄すらなく、当然、2~4の事項を定めたかどうかもチェックされません。

全体の2割強しか養育費が支払われていない、とよく報道されます。

養育費について定めなくても離婚できてしまうのですから、当然です。

なぜこのような書式が現在でも使用されているのか、理解に苦しみます。

 

裁判所での離婚では、さすがに1~4すべてマストです。

養育費について定めずに離婚はできません。

このように、協議離婚と裁判所での離婚では決めるべき内容がずれているので、注意が必要です。

 

婚姻費用はいつまで遡る?

2022.02.14更新

離婚成立前に別居すると、婚姻費用の支払義務が発生することがあります。

婚姻費用とは、おおまかに言ってしまえば、収入が多い方から少ない方へ支払う生活費です。

金額は、双方の収入に応じて決まります。

 

そもそも、一方的に別居した当事者から無条件で婚姻費用が請求できるのはおかしいのではないか。

その意見は一理あります。

しかし、現に裁判所では婚姻費用請求がほぼ無条件で認められているので、その点はいったん措きます。

 

婚姻費用の金額が決まるまでには、それなりに時間がかかります。

金額が決定した段階から支払うとすると、決まるまでの期間分の婚姻費用が失われることになります。

そこで、婚姻費用は「請求時点から」発生することになっています。

金額が決まったら、請求時点まで遡って支払義務が発生することになるのです。

たとえば、請求から4か月後に月額10万円と決まったら、4か月分40万円の支払義務が発生することになります。

 

請求時点とは、単に「支払ってほしい」と言っただけでは足りません。

一番確実なのは、婚姻費用分担請求調停を提起することです。

弁護士からの内容証明郵便でも十分です。

本人からのメールでも、「婚姻費用を請求します」と明記してあれば認められるケースが多いと思います。

 

現実問題として、いったん別居が始まってしまえば、相手に婚姻費用を請求する意思があれば、逃れる道はほぼありません。

実際に請求が来てしまえば、後は結果はほぼ変わりません。

婚姻費用の支払義務が発生し、離婚までその義務は続くことを前提に、その後の選択を考えた方が現実的です。

 

なぜ離婚成立前に面会交流調停?

2022.02.01更新

家庭裁判所の調停では、離婚に関係する全てのトピックが扱えるわけではありません。

調停で扱えるトピックは、法律で決まっています。

具体的には、家事事件手続法という法律の別表第二にまとめられています。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000052

 

面会交流は、「子の監護に関する処分」(別表第二第3項)です。

根拠となる法律の規定は「民法第766条2項及び3項」です。

民法第766条は「離婚後の子の監護に関する事項の定め等」に関する条文です。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

その第1項で、離婚する際には「父又は母と子との面会及びその他の交流」について定める、とされています。

これが面会交流の法的根拠です。

 

民法第766条は「離婚後の子の監護」に関する条文ですから、面会交流も本来「離婚後」の話です。

ところが、実際に家庭裁判所で行なわれてる多くの面会交流調停は「離婚前」です。

離婚に先立ち、配偶者が子を連れて家を出た。

離婚協議はしているが、子になかなか会えない。

もっと子に会えるように求めたい。

そういった案件がとても多いです。

 

裁判所は、「離婚前でも面会交流調停はできます」と謳っています。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_08/index.html

でも、これはおかしな話です。

上記の法律を読む限り、面会交流が離婚後の話なのは明らかだからです。

 

離婚後は単独親権ですが、離婚前はあくまで共同親権です。

面会交流とは、親権者でなくなった「父又は母」と子との面会であり交流です。

離婚前は双方とも親権者なのですから、本来、もう一方の親と子が会うことを制限する権利は誰にもありません。

離婚前はそもそも「面会交流」は成り立たないはずです。

 

離婚前は双方親権者なのですから、本来、「子を会わせたくない」と思う親が「会わせるべきでない理由」を主張・証明すべきです。

親には子に会う権利があるのですから、当然です。

本来、離婚前の親と子の交流に関する別の制度、別の手続きが整備されるべきなのです。

それをしないで、離婚後の制度のはずの面会交流調停で間に合わせる。

これは裁判所の怠慢だと思っています。

法律が整備されていないからといって、このような怠慢・ごまかしが許されている現状はおかしいです。

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