離婚相談ブログ

「家事放棄」は離婚の理由になるか

2019.01.14更新

妻が家事をしない。

そのことを離婚の理由として主張する方がいます。

 

この主張は、裁判所や弁護士に不評です。

 

・そもそも「家事をしない」ことは離婚の理由になるほど重大か

・なぜ妻だけが家事をやることになっているのか

・自分がやればよいのではないか

・不満があるならまず話し合えばよいのではないか

 

など、ツッコミどころは確かにたくさんあります。

そもそも、「家事をしない」ことが理由に挙がる場合、実は別の理由(女性関係など)がある場合も多いです。

 

でも、じゃあ「妻が家事をしないから離婚したい」という相談を受けた場合、「そんな理由じゃ離婚できませんよ」と言って終わりなのかと言えば、そうではありません。

相談者の方が最初に持ってくる「離婚したい理由」は、必ずしも本当の「離婚したい理由」ではないことも多いのです。

 

以前、「妻が家事をしないので離婚したい」と言って相談にいらした方がいました。

しかし、よく聞いてみると、実態はとても「家事をしない」というレベルの話ではありませんでした。

詳細は書きませんが、「家事をしない」どころか「ゴミ屋敷」レベルでした。

しかも、相談者の方が片付けようとすると、感情的になって抵抗するので、自分がやることもできない。

そのような状態が10数年続き、家庭内の常識は、一般とは相当ずれてしまっていました。

それでも、この状況は何かがおかしいと思ったときに飛びついた言葉が「妻が家事をしない」だった。

問題の根はもっと深かったのです。

 

というか、そもそも離婚を考えるほどの状況なのだから、問題の根が浅いはずがありません。

「妻が家事をしない」に限らず、表面的な言葉の背後にある深い事情をくみ取る必要があると感じています。

 

 

弁護士 小杉 俊介

 

 

「相続財産」と「財産分与」

2019.01.11更新

前回、「離婚」と「相続」はだんだん似てくると書きました。

しかし、ある点で「離婚」と「相続」は根本的に違います。

それは、自分が相続した財産の扱いです。

 

離婚の場合、自分が相続した財産は、特有財産となります。

夫婦で形成した財産ではないので、共有財産にはなりません。

財産分与の対象にもなりません。

 

でも、相続まで待てば別です。

相続の場合、共有財産と特有財産の区別はありません。

相手が相続した財産であっても、相続では自分のものにすることができる。

 

例えば、自分の親から不動産を相続したとします。

離婚の場合、その不動産は特有財産なので、財産分与の対象にはならず、相手にわたることはありません。

でも、相続まで待てば、その不動産を手に入れることも可能なのです。

 

相手の立場に立ってみれば、離婚に応じず、相続まで待ちたい理由がここにあります。

相続が現実的な可能性として浮上してくる年齢になってから離婚を考える場合、この点もしっかり考えておく必要があります。

 

 

弁護士 小杉 俊介

ジェフ・ベゾス氏にみる「経済的成功と夫婦の不和」

2019.01.10更新

amazon経営者のジェフ・ベゾス氏が離婚するとのこと

個人的に何を知っているわけでもありません。

ただ、世界一の富豪だけに、経営者の離婚についての分かりやすい説明例になりそうです。

 

まず、創業者の場合、資産の多くは会社の持分(株式)です。

資産なので、当然、財産分与の対象になります。

でも、これから他人になる人に会社の一部を分け与えるのは現実的ではありません。

他の利害関係者も反対するでしょう。

 

代わりに現金で分与を行おうとしても、そんな現金はありません。

ベソス氏の場合、7兆円を超えるなんて話もあります。

そんな現金を作ろうと思ったら、それこそ株式を売却するしかありません。

もちろん、それも現実的ではありません。

 

日本ではまだ例は多くないですが、海外では婚前契約で対処していることも多いと聞きます。

ただ、ベソス氏の場合、結婚が25年前、まだamazon創業前とのこと。

会社がここまで大きくなることを見越して契約している可能性は高くなさそうです。

 

こうやってニュースになっているからには、当事者間で合意ができているということでしょう。

でも、合意できない場合、経営者の離婚は相当難しい、ということが実感できます。

 

もう1つ。

こういうニュースに触れたり、実際に経営者の方からの相談を受けたりする際につくづく感じるのは、経済的成功と夫婦関係の円満の複雑な関係です。

普通は、経済面での失敗は夫婦不和の原因です。

ありていに言えば、夫の稼ぎが少ないと、夫婦関係は上手くいかない。

弁護士として相談を受けていても、実際にそういう傾向は明らかです。

 

それを逆に考えれば、稼ぎが多ければ夫婦関係は円満に行きそうです。

会社員ならあり得ないような収入を得る会社経営者ならなおさらです。

 

ところが、現実には、会社の成功とともに夫婦関係が上手く行かなくなった、という例をよく聞きます。

経済的成功はむしろ夫婦不和の方向に働く要素なのではないか、と思わされるほどです。

 

自由になる金が増えたことによって私生活で問題が発生する、という面ももちろんあります。

でも、それだけではなさそう、というのが私の実感です。

 

明確な答えを持っているわけではありません。

ただ、夫婦というのは微妙なバランスの上に成り立っているものだ、ということは言えそうです。

 

 

弁護士 小杉 俊介

 

 

 

「離婚」と「相続」はだんだん似てくる

2019.01.10更新

歳を重ねるにつれて、似てくるのが「離婚」と「相続」です。

 

まだ若いうちは、資産もそれほどありませんし、亡くなるのもだいぶ先のことなので、「離婚」と「相続」はまるで別のものに見えます。

でも、時が経つにつれ、資産は形成されていきます。

子どもや性生活などの重要度も下がってきます。

離婚するにも数年かかるとして、その間にどちらが亡くなる可能性も上がってきます。

そうなると、がぜん「離婚」と「相続」は似てきます。

 

子がいる場合、夫婦の相続分は2分の1です。

離婚の財産分与では、共有財産を2分の1ずつに分けることになります。

つまり、自分より相手の方が先に亡くなる可能性が高い場合、財産の分配という点では違いがなくなってきます。

 

要は、離婚しようがしまいが、経済的には変わらない、ということです。

そうなると、例えば一方が離婚を望んだとしても、もう一方がそれに応じる動機がなくなってくる、ということです。

 

こうなってくると、離婚したくても、なかなか思うように行かなくなってきます。

ある程度以上年齢が上がってからの離婚したい場合、将来の相続まで視野に入れて戦略を立てる必要が出てくる、ということです。

 

「離婚」と「相続」の最大の違いとして、「特有財産」がありますが、それは次回に。

 

 

弁護士 小杉 俊介

「調停申立書」が届いたら

2019.01.08更新

ある日突然、妻が子を連れて出て行った。

ほどなく、裁判所から「調停申立書」が届いた。

 

私のところへ来るご相談で一番多いのは、このパターンです。

調停申立書には、調停期日通知書という書面もついていて、第1回期日を一方的に指定されています。

 

書面が届いた際の対応は、「弁護士に相談」の一択だと思います。

弁護士の営業トークではないつもりです。

依頼するにせよしないにせよ、相談はするべきです。

 

調停の具体的な進行。

養育費や財産分与の具体的な落としどころ。

そういった点が頭に入っているか入っていないかで、その後の流れが大きく変わってきます。

 

調停は、ほっておけば時間がかかります。

1年かかることだって普通にあります。

最初に相談しておくだけで、その期間がぐっと短縮できる可能性だってあります。

 

まずは相談。

その後のことは、相談の後に考えても遅くありません。

 

 

弁護士 小杉 俊介

「公正証書」にはどんな効き目があるのか?

2019.01.07更新

裁判所を通じて離婚するのは、ほんの一部です。

当事者同士の意思が一致しているなら、調停も裁判も必要ありません。

でも、当事者同士の合意はできていても、果たして相手が約束を守ってくれるか不安な場合。

そんな場合に、選択肢として出てくるのが「公正証書」です。

 

公正証書とは、大まかに言ってしまえば、公証役場で公証人が作成する契約書です。

それ以上ではありません。

相手が守ってくれないなら、単なる紙切れです。

 

公正証書を作ることの意味は、最終的には1つしかありません。

それは、強制執行が可能になることです。

離婚の場合、具体的には、相手が約束した養育費を払ってくれない場合に、給料を差し押さえることが出来るようになります。

逆に言えば、それ以外はほぼ意味はないと言っていいです。

 

結局、離婚で大切なのは「合意」です。

相手を強引に合意させることはできず、話し合いを重ねるしかありません。

一足飛びに相手に合意させる。そんな力は公正証書にはありません。

 

公正証書に期待し過ぎず、いざという時の給料差押えのための手段だと割り切るのが現実的です。

 

弁護士 小杉 俊介

「調停委員」って誰?

2019.01.06更新

離婚調停とは、調停委員会をはさんだ当事者同士の「話し合い」です。

調停委員会は、裁判官1名、調停委員2名(男女各1名)の計3名で構成されます。

といっても、裁判官は日頃の調停には出て来ないので、実際に会うのはほぼ調停委員2名です。

 

裁判官はいいとして、問題は「調停委員」です。

調停委員って、誰なのでしょうか?

 

まず、調停委員は離婚の専門家ではありません。

法律の専門家ではありませんし、人間関係の専門家でもありません。

様々な方面から集められた中高年男女です。

役所仕事なので、報酬も決して高くないと聞いています。

それなりに名誉職ではあるらしいですが、言ってみればアマチュアです。

 

考えてみれば不思議です。

現在の日本の法制度では、裁判所を通じて離婚するには必ず調停を経ないといけません。

当事者にとって、離婚は人生の一大事です。

なのに、アマチュアが仕切る話し合いを経ないと裁判所を通じた離婚ができない仕組みになっている。

 

弁護士から見ても、正直、法律の専門家でもない方が場を仕切っていることの不都合を感じることはとても多いです。

何より、調停委員は当たり外れが大きいです。

専門家としての訓練や選考過程を経ていないから当然です。

 

なぜこんな制度なのか?

色々と理由は挙げられますが、根本的には

「男女のくっついた離れたなんてのは、近所のおじちゃんおばちゃんが間に入ってなんとかするものである」という考え方があるのだと思います。

そんな時代遅れな、と言われるかもしれませんが、私にはそう思えますし、それ以外に説明は難しいとも思います。

 

私は、離婚とは、個人同士の関係の整理整理であると割り切って考えるより、まずは世間知で解決を試みるべき、という考え方は嫌いではありません。

でも、裁判所の制度としての離婚調停や、調停委員の人選については…もういい加減、こんなの辞めませんか、と考えています。

 

近所のおじちゃんおばちゃんが間に入った方が丸く収まる。

そういう時代では、もうないと思うのです。

 

ある意味でもっとドライに、ある意味でもっと効率的に。

離婚調停も、そういう方向に変わっていくべきだと思います。

 

弁護士 小杉 俊介

 

慰謝料に「相場」はあるのか

2019.01.04更新

離婚の慰謝料の相場はどれくらいか?

相談でよく聞かれます。

模範解答は、

「個々の具体的事情により変わるので「相場」なんてものはない。

 でも、現実的には100万円から300万円の間とよく言われます。」

といった感じでしょうか。

 

そもそも

「合意で離婚するだけなら慰謝料は発生しないよ」

とか

「財産分与との絡みもあるので慰謝料だけ取り出しても意味ないことも多いよ」

とかいった前提も説明する必要があるのですが、それは次の機会として。

 

結局、相場は「ない」のか「ある」のか。

正直なところを言ってしまえば、様々な具体的事情を金額に換算すること自体、無理があります。

無理があるので、結局、何か基準によって「えいや」で決めるしかない。

そこで頼る基準のことを「相場」というなら、「相場」は存在する、という方が現実に近いです。

 

弁護士 小杉 俊介

男性側に立った離婚問題の解決を

一時の迷いや尻込みで後悔しないためにも、なるべく早い段階でご相談ください。