離婚相談ブログ

「今後の窓口は当職となります。」

2023.02.22更新

配偶者に代理人弁護士が就任し、受任通知書が届いたとします。

受任通知書には、ほぼ100%の確率で、タイトルのような文言が入っています。

今後、離婚に関する件は弁護士に連絡せよ、本人に直接連絡するな、という意味です。

 

協議を進めるためには窓口は統一されていたほうが良い。

それは間違いありません。

本人にも弁護士にも連絡してしまったら、混乱してしまいます。

双方のためにも窓口は1つにすべきです。

 

ただし、この「窓口指定」には法的な強制力はありません。

従うかどうかはあくまで任意です。

 

また、弁護士は何でもかんでも代理するわけではありません。

あくまで委任の範囲、一般的には離婚に関する件のみです。

離婚に直接関係しない事柄については、そもそも対象に含まれません。

 

代理人の介入後は、当事者同士のやり取りは原則禁止というのは誤解です。

同居継続中の場合。

小さいお子さんがいらっしゃる場合。

どうしても当事者同士で連絡を取り合う必要がある場面はあります。

そのような場合まで、代理人を通していたらキリがありません。

 

何でもかんでもコミュニケーションを代理人が巻き取ってしまうのは、業界の悪弊だと思います。

特にお子さんがいる場合、離婚後も子の父母としての関係は続きます。

離婚協議中だからといって、何でもかんでも代理人を通すのは、当事者の利益にもなりません。

家を出てはいけない

2023.02.14更新

だいぶ前から夫婦の間で離婚の話は出ている。

離婚の話になると揉めてしまい、家庭の雰囲気は良くない。

未成年の子にもストレスを与えている。

配偶者からは、離婚より前に家を出るよう暗に求められている。

子に悪影響があってはいけないし、自分もこのまま同居を続けるのはストレスだ。

離婚協議をスムーズに進めるためにも、自分1人が家を出たほうが良いとも思う。

家を出て大丈夫か。

 

上記のような相談を受けることがあります。

答えは1つ、「家を出ないでください」です。

家の所有者だったり賃借人だったりする場合は「絶対に」です。

 

理由は、家を明渡してしまったらまず家には戻れないからです。

家を失った状態が離婚協議の出発点になります。

 

自分が家にいなくても、住宅ローンや家賃は当然発生し続けます。

別居すると婚姻費用も請求されることが多いです。

さらに、自分の住む所も確保しなければならず、新たに家賃も発生します。

この三重の経済的負担は非常に厳しいです。

 

負担の重さに耐えかね、早期に離婚を成立させて負担を免れようとしても、そう上手くはいきません。

相手にしてみれば、自分の住環境は変わらず、不仲な配偶者だけ目の前からいなくなった状況です。

言葉は悪いですが、「追い出し」に成功したわけです。

相手に住居費を負担させつつ、じっくり検討すれば良い。

もはや離婚を急ぐ理由がありません。

 

では、せめて相手も家から出てもらい、家自体を処分してしまおうとしても、これも上手くいきません。

家の所有者が誰であれ、現に住んでいる人を追い出すのは非常に困難です。

家に関する経済的負担だけが延々と続くことになります。

 

離婚成立まで思い経済的負担を負った側と、住居費すら負担しないで良い相手方。

そこまでパワーバランスの崩れた二者間で、対等な協議など期待できません。

離婚協議でも、不利な条件を呑まざるを得なくなる恐れもあります。

 

家は城です。

自ら城を明け渡しては、戦には勝てません。

シンプルに言えばそういうことです。

 

もちろん、同居を続けることにはストレスが伴います。

子に負担をかけてもいるでしょう。

それでも、自分から家を出てしまうことのリスクとは比較はできません。

やはり、家を出てはいけません。

 

 

「共有財産」は共有ではない

2023.02.08更新

民法第762条
①夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
②夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

 

離婚する際、どちらかが請求すれば、原則、婚姻期間に形成された財産は双方に分与されます。

いわゆる財産分与です。

一般的には夫婦の「共有財産」を2分の1にすることになります。

 

財産分与の対象となる財産が「共有財産」と呼ばれることがあります。

しかし、この言葉は誤解を生みやすく、問題が大きいです。

理由は単純で、共有でもなんでもないからです。

 

自宅内の家電や家具などは確かに2人の共有物ということで良いでしょう。

しかし、たとえば預金残高は文句なく口座名義人に属します。

夫婦だからといって、共有などではありません。

不動産もそうです。

自宅の所有者は、登記されている所有者です。

それ以上でも以下でもありません。

離婚の場面で「共有財産」と呼ばれる財産は、ほぼ共有ではないのです。

 

では、なぜ「共有財産」と呼ばれるのか。

恐らく、「もともと夫婦2人で共有していた」からこそ2分の1ずつ分与される、ということだと思われます。

しかし、この理屈はおかしい。

財産分与というのは、分与する時点で新たに財産の所有権を移動させることです。

分与する前は、やはりどちらかの単独所有なのです。

2分の1ずつに分与するという結論から遡及して、分与以前から「共有財産」だったとするのは論理が逆転しています。

 

単に論理が逆転しているというだけではありません。

「共有財産」という言葉は、当事者に誤った先入観を与えていることがあります。

実際には共有ではないのに、共有物であるとの認識に立った主張がされることがあるのです。

 

代表例は以下のようなパターンです。

自宅はXの単独所有で、配偶者Yは自宅を出ていき別居に至った。

自宅に残ったXが、自宅を売却することにした。

この場面で、Yが「共有財産を勝手に売却するな」と言ってくる。

でも、これはおかしいです。

自宅はXの所有物なのですから、処分するかどうかはXが決めることです。

「共有財産」という言葉が、自分が権利者であるかのような誤解を生んでいるのです。

 

自宅の買い手である第三者の立場から見れば、問題はより分かりやすいです。

登記上の単独所有者が、不動産を売りに出していたので買った。

その後で、登記に載っていない売り手の配偶者から「共有財産だから勝手に買うな」と言われたらたまったものではありません。

 

結局、「共有財産」という言葉が間違っている、ということに尽きます。

「共有財産」とは、冒頭に挙げた民法762条によれば、「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」のことです。

上で例に挙げた家電や家具類のことです。

不動産や預金などは「共有財産」ではありません。

 

財産分与の対象となる財産、という意味で「分与対象財産」という言葉も使われます。

こちらなら誤解の余地はありません。

離婚と共に財産分与が実施されてはじめて、所有権が移転する。

それまでは夫婦いずれかの単独所有である。

それに尽き、「共有財産」などという紛らわしい言葉を使う必要はどこにもありません。

 

分与対象財産のことを共有財産と呼ぶのは止めるべきです。

単純に間違っています。

受任通知書に「離婚」の文字が入っていない場合

2023.02.06更新

配偶者が出て行き、ほどなく弁護士から受任通知書が届いたとします。

配偶者の代理人に就任したこと。

以後は自分が窓口になること。

配偶者はこれこれこういう理由で別居を決めたこと。

婚姻費用の支払いを請求すること。

おおよそ上記のような内容が書いてあります。

 

一通り最後まで読んでから、あることに気付きます。

「”離婚”の文字がどこにも入ってない」

別居して弁護士までつけるのだから、離婚前提の話だと普通は思います。

ところが、どこにも「離婚」という文字がない。

時々こういう受任通知書を見かけます。

 

理由はシンプルです。

弁護士が、「婚姻費用分担請求」しか受任していないのです。

家庭裁判所では、「離婚調停」と「婚姻費用分担調停」は別の手続きです。

そのうち、後者から受任していない。

だから、受任通知書に離婚の文字が入っていないのです。

 

別の法的請求、別に手続きなのだから、婚姻費用分担請求だけを受任することは特に問題ない。

そういう考え方もあるだろうと思います。

しかし、そもそも夫婦には同居義務があります。

自ら同居義務を放棄して別居するのですから、夫婦関係を継続する意思は通常ないはずです。

夫婦関係を継続する意思がないということは、離婚意思があるということです。

夫婦関係を継続する意思はないが、離婚意思もないという状態は通常予定されていません。

なのに、離婚については受任せず、婚姻費用分担請求だけを受任する。

婚姻費用について調停・審判で決まったら、そこで代理業務は終わり。

これが筋の通った考え方だとは思えません。

 

問題が顕在化するのは、婚姻費用分担請求を受けた側が、離婚を請求する場合です。

婚姻費用を請求してきた代理人が、「自分は離婚は受任していない」と言う。

窓口もないため、協議がなかなか進まない。

こういう事態に陥ってしまうことがあります。

 

根本には、別居に至る経緯を考慮することなく、一律に婚姻費用分担義務を課し、さらに強力な執行力まで付与する制度の問題です。

そのような制度のおかげで、婚姻費用の確保は決して難しくありません。

時間もそれほどかかりません。

その一方で、離婚は時間と手間がかかる割に、金銭的な見返りが必ずある訳でもでありません。

そこに、婚姻費用分担請求だけを受任するインセンティブが生まれます。

 

でも、それでいいのでしょうか。

少し違う話をします。

今は下火になりましたが、過払い金請求という類型があります。

詳細は省きますが、過払い金請求は手間も時間もかからず回収可能性も高い。

弁護士にとって非常に儲かる分野でした。

しかし、過払い金はそもそも借金問題の一部です。

高利の消費者金融から借りたため、払い過ぎた金を取り戻すのが「過払い金」です。

過払い金がある依頼者は、同時に借金問題も抱えていることが一般的です。

ところが、借金問題の解決、債務整理には手間も時間もかかります。

その割に、過払い金ほどの実入りもない。

そこで、債務整理のうち過払い金請求だけ受任する弁護士が出るようになりました。

こういった行為は業界内で「ツマミ食い」と呼ばれ、問題視されました。

 

離婚問題のうち、婚姻費用分担請求だけ受任する行為は、「ツマミ食い」によく似ています。

 

「本書面到達から1週間以内に連絡をください」

2023.02.05更新

ある日、配偶者の代理人を名乗る弁護士から「受任通知書」なる書面が内容証明郵便で届く。

書面には、配偶者は離婚を希望しており、今後の窓口は代理人が務めると書いてある。

場合によっては、婚姻費用を請求する旨の記載もある。

これが、弁護士を介しての離婚協議が始まる代表的なパターンです。

 

その書面の末尾のあたりには、決まって表題のようなことが書いてあります。

「ご連絡いただけない場合には、やむを得ず法的措置を取ります。」

というようなことが書いてある場合もあります。

私自身、何度も書きました。

 

この「1週間」という期間の根拠はなんでしょうか。

実は、「何となく」です。

特に根拠はありません。

 

1週間という期間を守らなかったことによる不利益は何でしょうか。

実は明確にこれというものはありません。

家庭裁判所は調停前置と言って、まず調停を経る必要があります。

調停はあくまで話し合いです。

当事者間で話し合うのと何ら変わりません。

 

調停で話がまとまらなければ場合によって訴訟になります。

しかし、訴訟になったからといって必ずしも不利益ではありません。

財産分与は2分の1,養育費は算定表どおり。

お金に関するルールは訴訟になっても変わりません。

 

当事者間で話し合っても、調停になっても、訴訟になっても特に有利でも不利でもありません。

1週間という期限を守らないことによる不利益は、少なくとも法的にはありません。

 

もちろん、受け取った受任通知書を無視しても良いと言っているわけではありません。

きちんと対応することが、離婚自体の解決のために重要なのは当然です。

ただ、1週間という期間の短さに焦り、判断を誤ることは避けるべきです。

男性側に立った離婚問題の解決を

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