男性のDV被害だけの特徴
2019.09.11更新
離婚相談を受けていると、配偶者からの暴力、いわゆるDVについてもよく聞くことになります。
被害者は、男性、女性は問いません。
男性側の弁護士をうたっているので、男性被害者の話を聞くことの方が多いです。
DVの実態に、男女の違いはあまり感じません。
しかし、一点、男女で明らかに異なる点があります。
それは、男性のDV相談の方が「切羽詰まっている」ことです。
男性のDV被害の方が深刻だから、ではありません。
女性の場合は弁護士の所にたどり着くまでに、既に別の所で相談してきている場合が多い。
友人や、公共窓口に相談した後、最後に弁護士の所にたどり着く。
それに対して、男性の場合は、いきなり弁護士です。
友人はもちろん、公共窓口にもどこにも話せず、最終手段として弁護士の所に来る。
そして、はじめてDVについて口を開く。
だから、「切羽詰まっている」のです。
何故そうなるのか。
男性と女性の性格の違いに原因を求める意見もあります。
人に相談することに抵抗のない女性に比べ、男性は抱え込みがち、という訳です。
そういう傾向はあるのかもしれません。
でも、もっと明解な答えがあります。
それは、女性には広く相談窓口が開かれているのに対し、男性には窓口がない、という事実です。
平成13年から、いわゆるDV防止法が施行されています。
当然ですが、同法では被害者は男女は問いません。
ところが、同法に基づき地方自治体等が設置している窓口の名前は多くの場合「女性センター」です。
これでは、男性が相談に行きようがありません。
DVは「女性問題」ではありません。
もっと幅広く「家族の問題」であり、「見つかりにくい犯罪」の問題です。
ところが、広く問題解決にあたるべき行政が入口で女性に限定しているのです。
DV=女性が被害者、という誤ったイメージの流布に、行政が加担しているのです。
さらに深刻なのは、DV=女性が被害者、というイメージのせいで、男性に対するDVがエスカレートしている面があるのではないか、ということです。
多くの男女のカップルで、体力的に優位なのは男性の方です。
それはDV被害にあっている男性でも変わりません。
でも、男性被害者はDVを受けるままになっている場合が多い。
「一回でも反撃したら、自分がDV加害者にされてしまう。」
そう言う方は多いです。
杞憂ではありません。
女性の方が先に手を出したのに、たった1回反撃したばかりに、DV加害者として離婚を余儀されなくされた。
そういう実例はあります。
DV問題に対する行政や裁判所の対応は、問題だらけです。
問題点を挙げたらきりがありません。
中でも、男女の非対称性は、一刻も早く根本的に変革される必要があります。
弁護士にできることには限りがあります。
切羽詰まった相談者の方が少しでも減るためにも、まず国から変わるべきです。