婚姻費用はいついかなる場合にも払わないといけないのか
2019.03.13更新
結婚している夫婦が別居した場合、収入の多い方から少ない方に婚姻費用を支払う義務が生じる。
それが基本です。
別居の理由は基本的に関係ありません。
夫婦には相互に扶養義務がある以上、別居したら婚姻費用支払義務を負う。
そういうことになっています。
でも、婚姻費用の支払いを納得いただくのが難しい場合も多いです。
配偶者が一方的に出ていった場合、別居を望んでいた訳でもないのになぜ婚姻費用を支払わなければいけないのか。
ましてや、残された方が離婚を望んでいない場合は深刻です。
ただでさえ、同居している時より、別居した場合の方が経済的負担は増えます。
世帯を2つに分けるのですから当然です。
子がいる場合、養育費よりも婚姻費用の方が高額になります。
子がいない場合には、そもそも養育費は発生しないので、離婚すれば婚姻費用などの月ごとの支払いはなくなります。
こうして、婚姻費用の存在が、望んでもいない離婚の方向に当事者を押し流していくことにもなるのです。
出て行った側が浮気をしていて、立場が悪くなった一方的に出ていった場合。
そのような場合に、婚姻費用の請求は権利の濫用だから認められない、という裁判所の判断がされた例はあります。
でも、これはあくまで例外です。
多くの場合、とりあえず生活に困るから、という理由で、別居の理由のいかんを問わず婚姻費用の請求は認められます。
でも、それで本当に良いのか、ということを最近考えています。
民法上、そもそも夫婦は同居義務を負っています。
同居を一方的に解消し、別居を開始するには、しかるべき理由がなければいけないはずです。
少なくとも、合理的な理由なく一方的に別居を開始した場合に、婚姻費用の支払請求が認められるのは不公平ではないでしょうか。
裁判所の実務を変えるのは大変ですが、本来は婚姻費用の支払いを請求する際には、別居に至る合理的な理由のある程度の立証まで要求されてしかるべきではないでしょうか。
その方がフェアですし、同じ金額を払う場合でも納得を得やすいと思うのです。
現在の日本の離婚にまつわる制度や裁判所の判断は、一方的に子を連れて別居する行動を正当化し過ぎており、そのことが当事者間の無用な対立を生んでいる。
婚姻費用もその要素の1つであり、変わっていくべきではないかと私は考えています。
弁護士 小杉 俊介