「子は母親のもの」なのか
2019.03.12更新
日本では、離婚後単独親権が原則です。
父親か母親か、どちらか片方だけが親権者となります。
「親権なんて財産の管理権だけ、離婚したって親子であることは変わらない」と言うことは簡単です。
でも、どちらかだけが親権者だけになった後も、対等の親同士であり続けるのは言うほど簡単なことではありません。
そして、多くの場合、母親が親権者になります。
事実としてそうです。
この理由として、裁判所は母性優先の原則を採用しているから、とよく言われます。
でも、多くの場合、それ以前の段階で親権者は決まっています。
当事者同士の意識として、「母親が親権者であるべき」と当然に考えているケースがほとんどなのです。
何故なのでしょうか。
私自身、最近まで、要は「母性」の問題であると考えてきました。
母親は本能として子を自分のものだと思う。
周囲も当然そう考える。
その結果としての「母性優先」だと。
でも、「母性」に答えを求めるのは間違いであると今は確信しています。
そもそも、離婚後単独親権という制度の出どころは「イエ制度」と「父権制」です。
結婚とは、「イエ」を形成する行為である。
「イエ」は家長たる父が統べるものである。
家に属するものは家長たる父のものである。
子もまた家に属し、家長たる父の所有物である。
単独親権という制度の根本にこのような発想があることを争いのないところだと思います。
「イエ制度」や「父権制」は、家の実態が失われるにつれ崩れていきます。
ところが、単独親権は制度として残ってしまった。
そこで、横滑りのように、子の所有者の地位についたのが「母」だったのではないでしょうか。
要は、「子は母のものである」とする発想の根本は、なんということはない、「イエ制度」であり「父権制」なのではないでしょうか。
イエのことは家長が決める。
こと子に関しては、母親が家長である。
ゆえに、子の帰属は母親が決めることである。
「子は母親のもの」となる裏には、そういう発想があると私は確信しています。
でも、当たり前ですが、子は誰の所有物でもありません。
子は独立した個人であり、親はあくまで監護の責任者に過ぎません。
そして、せっかく2人も親がいるのに、どちらかに監護の責任者をしぼる必要もありません。
「子は母親のもの」を前提とする発想は克服されていくべきです。
弁護士 小杉 俊介