再婚後の養子縁組はなぜ自由なのか
2019.02.27更新
民法第798条
「未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。」
妻が再婚した後も、養育費を支払わなければいけないのか。
そんな質問をよく受けます。
そのたび、答えに苦慮します。
答えが難しいわけではありません。
再婚相手が子と養子縁組した場合には、理屈上は扶養義務を負うべきは養父となる。
養育費の減額請求をすれば、事情が変更されたとして、養育費の減額又は免除事由となる。
これが模範解答です。
しかし、離婚してもはや没交渉の相手が再婚したかどうか、一体どうやって知れば良いのでしょう。
公正証書などで「再婚した際は相手に知らせること」と定めても、守られる保証はありません。
養育費が減ることにつながる事情をわざわざ相手に知らせる動機がないからです。
さらに言えば、相手が再婚しても、子と養子縁組しなければ、扶養義務はなくなりません。
養育費をもらい続けるために、敢えて養子縁組をしない、という選択も可能なのです。
再婚すれば家計収入は増えるのだから、事情の変更として、養育費の減額事由になる、という反論があるかもしれません。
だったらいっそのこと、パートナーが出来ても再婚しない、という選択もあり得ます。
その場合、生活を共にしていたとしても、戸籍からもたどれないので、ほぼ100%セーフです。
再婚した後の養育費について質問を受けた際、答えに苦慮するといったのはこれが理由です。
そういった質問をする方は、多くの場合、隙あらば養育費の支払いを免れようとしている、という訳ではありません。
そうではなくて、相手の事情いかんに関わらず養育費の支払義務を課されるという制度に対する不信感が問題なのです。
そして、上記のとおり、大筋においてその不信感は正しい。
不信感を抱かれても仕方ない制度になっていることは、私は否定できません。
私は、依頼者の方にきちんと養育費の意義を説明し、理解していただき、きちんと履行していただくことも、仕事の重要な一部だと考えています。
だからこそ、このような欠陥ある制度は何とかしてほしい。
離婚したら、実の子であってももはや親権者ではなくなる。
一方、再婚した場合には、裁判所の審査など必要なく、実の親に知らせる必要などもちろんなく、養子縁組ができる。
冒頭の条文はそういうことを意味しています。
誰を親とするかを自由に親権者が決められるという制度は、一体どのように正当化されるのでしょうか。
私は、「子は親の所有物である」という前時代的な考え方しか、正当化の方法を思いつきません。
そのような前時代的な制度を放置したまま、一方で、「もはや親ではない」と宣告された側に養育費支払義務を課す。
そのような制度上の矛盾が、養育費支払義務の「割り切れなさ」「飲み込みにくさ」を生んでいます。
「離婚しても親子関係は変わらないのだから、当然、養育費を支払う義務はありますよ。」
そうすっきり説明したいのです。
そのためにも、子が親の所有物、ひいては「家」の所有物であるかのような制度は一刻も早く変わってほしいと願っています。
弁護士 小杉 俊介