「婚姻費用」という名の兵糧攻め
2018.12.28更新
「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を負担する。」(民法第760条)
この条文を根拠として、別居した夫婦間に発生するのが「婚姻費用」です。
別居しているけど、まだ離婚していない場合に、収入の多い方が少ない方に対して払うことになります。
婚姻費用で大事なのは、「養育費より婚姻費用の方が高い」ということです。
養育費は、子どものいる夫婦について、離婚後に発生します。
養育費より婚姻費用の方が高いということは、「離婚すれば経済的負担が減る」ということです。
子どものいない夫婦ならなおさらです。
離婚するまでは婚姻費用を払わないといけないけど、離婚すればゼロ円です。
離婚に先立って、一方的に別居する方の大きな動機がこの「婚姻費用」です。
別居すれば、別居の理由に関係なく、婚姻費用を請求できる。
相手にしてみれば、離婚するまで何年だって婚姻費用を支払わないといけない。
離婚さえすれば、子どもがいても養育費は婚姻費用の方が安いし、子どもがいなければ支払いから完全に解放される。
じゃあ仕方ない、離婚しよう。
相手の気持ちを、そういう方向に持っていきやすいのです。
そういう制度になっていること自体を批判するつもりはありません。
でも、そもそも婚姻費用が養育費よりも高いのは「子どもだけでなく、配偶者の生活費も含まれるから」です。
一方的に、自分の意思で出ていった相手が、それでも出て行かれた相手から生活費を受け取れる。
そこに割り切れなさがあります。
別居に至る経緯を、婚姻費用の算定に反映する。
もしくは、そもそも養育費と婚姻費用の間にある傾斜をなくす。
そうすれば、この割り切れなさは減るはずです。
少なくとも、婚姻費用が、離婚に同意させたい相手に対する兵「兵糧攻め」の手段として使われている現状が健全だとは思いません。
小杉