退職金は夫婦の共有財産なのか
2018.12.25更新
離婚の際には、夫婦の共有財産は名義にかかわらず2分の1に分けなければいけません。
持ち家、貯金、生命保険、車…こういった分かりやすい財産はあまり争いようがありません。
ここで問題にしたいのは、「退職金」です。
離婚の時点で退職したとして、仮に計算した退職金額は夫婦の共有財産として、財産分与の対象となる。
これが原則です。
ただ、退職が離婚よりずっと先なら、実際に退職金を受け取れるかは心もとないです。
そこで、大体、退職まで10年を切っていれば共有財産に含め、10年以上あれば含めないけどまあ配慮する。
裁判実務は大体そんな感じになっています。
でも、この判断基準、どこまで現実にあっているでしょうか。
退職金は「賃金の後払い」である。だから、勤務期間に応じて夫婦の共有財産となる。
これが裁判実務の理屈です。
でも、退職金が単なる「賃金の後払い」だというだけなら、後で払う理由はありません。
わざわざ後で払うのは、要は、会社としては退職まで辞めてほしくないからです。
退職まで、会社を信じてついてきてほしいからです。
退職まで会社を信じた従業員に対する報奨金。
退職金には、そういう性質があると思うのです。
一方で、離婚というのは、要はある人との結婚生活からの離脱です。
その人と生活を続けることの価値を信じられないから離脱する、ということです。
そのこと自体は問題ありません。
違和感があるのは、結婚生活からは離脱するのに、その期間に相当する退職金は共有財産になる、という点です。
仮にその時点で退職したら、という前提で計算した金額は、あくまで仮の金額です。
実際には辞めないからです。
自分は結婚生活からは離脱するのに、相手が会社勤めからは離脱しないことを前提とした資産について分与を求める。
そこに、退職金を財産分与に含めることの飲み込みにくさがあります。
ここまで書きましたが、退職金を財産分与に含めるな、と主張したいわけではありません。
ただ、現行の10年をめどにした判断基準はちょっと長すぎると感じます。
公務員や、公務員に準じるような公共的な大企業以外にはあてはまらないのではないでしょうか。
もう少し柔軟に、かつ「会社勤め」ということの実態にあった、個別の判断が必要だと思います。
小杉