別居時に持ち出されてしまった財産を取り戻せるか
2019.03.07更新
配偶者が家を出る際に、自分の通帳とカードを持ち出し、金を引き出してしまった。
何とか取り返せないか。
そんな相談を受けることがあります。
結論からいうと、現状はそれは難しいです。
自分名義であっても、夫婦共有財産なのだから、相手にも処分する権利はある。
引き出された分は、財産分与の中で解決する問題だ。
これが公式回答になります。
しかし、この回答はどこか変です。
夫婦共有財産というのは、あくまで離婚時に財産を分ける際の話です。
婚姻中は、夫婦といえど財産は別のはずです。
しかも、財産分与の基準時は離婚成立時ではなく、婚姻破綻時です。
離婚に先立って別居している場合、別居したタイミングが婚姻破綻時となることが多いです。
つまり、婚姻破綻しているのに財産の処分権はなぜか残っている、ということになります。
別居時が婚姻破綻時となるなら、「家を出る」ことによって婚姻破綻を確定させたのは「出ていった側」です。
その出ていった側が、財産の処分権を主張する。
この構図を納得していただくのは無理があります。
原則論で言うなら、別居時に持ち出された財産は、財産分与を待たずに速やかに返却されるべきです。
返却を拒む場合には、不法行為の成立が認められてもおかしくありません。
資力に乏しいので、とりあえずの生活のために財産を持ち出さざるを得なかった。
最終的には財産分与されるんだから、そこで解決すればいいじゃないか。
理屈は通りませんが、言いたいことは分かります。
でも、家を出ていく配偶者はお金がなくてかわいそう、というおおざっぱな理由付けで、人の財産を勝手に持ち出すこと全般を正当化するのはおかしい。
これは声を大にして言いたいです。
弁護士 小杉 俊介