財産分与が2分の1なんて法律には書いてない、という話
2025.12.04更新
「…離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」
(民法第768条1項)
これが財産分与の根拠となる条文です。
財産の何割を請求できるかは書いてありません。
「財産の2分の1を請求することができる。」などとは書かれていない。
一方、768条第3項にはこう書いてあります。
「…家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきか並びに分与の額及び方法を定める。」
「分与の額」は「一切の事情を考慮して」定める。
事案ごとの事情を総合的に考慮して柔軟に決めましょう、ということです。
「機械的に2分の1」とは正反対のやり方が、法律には書いてあるのです。
では、「2分の1」という割合はどこから出てきたのか。
財産分与の対象となるのは「夫婦共有財産」だからです。
2人で共有だから、持分割合は2分の1ずつ。
だから、財産分与でも2分の1ずつに分ける。
そういう論理です。
しかし、「夫婦共有財産」というのは財産分与のための擬制に過ぎません。
法的な意味での「共有」ではない。
法的には、日本の民法は明確に夫婦別産制を採用しています。
夫婦であっても財産は別、それが大原則です。
「夫婦共有財産だから2分の1ずつ」というのは論理が循環してしまっています。
実際、調停や訴訟において財産分与=2分の1ずつが厳格なルールかと言えば、そんなことはありません。
2分の1よりも多い金額が認められることは珍しくありません。
慰謝料的財産分与。
扶養的財産分与。
夫婦共有財産の2分の1では絶対額が足りない。
それでは貰う側がかわいそうとなれば、理屈はいくらでも付いてきます。
そもそも、法律上は2分の1とは書いていないのですから、別におかしなことではありません。
逆はどうか。
2分の1より減らす方向には理屈はほぼ用意されていません。
離婚にあたっての有責性は財産分与とは無関係です。
財産分与の結果として分与する側が経済的に困窮することがあってもまず考慮されません。
では、おとなしく2分の1支払うしかないのか。
必ずしもそうではない、というのが実感です。
2分の1はあくまで目安です。
法的に定められているわけではありません。
法律にはむしろ「総合的に考慮して決める」旨書いてあります。
詳しい事情を総合的に主張し合う中で、しかるべきところに決まっていく。
その結果は必ずしも2分の1ばかりではありません。
もっと少ない例は現にあります。
そしてそれが、法律の定めから導かれる本来のあり方です。